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昔に書き殴った小話とか最近書いた小話とか。ジャンルめちゃくちゃ、女性向け多いのでお気をつけて。
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ほああぁぁ…やっとちゃんと始動させる気になった駄文専用ブログです。
生暖かい目でお付き合い下されば幸いかと…

ジャンルは雑多の予定です。

記念すべき一作目はもう4年も前に作ったものらしい……です
ほのぼのな学生BLでございます。

同じ名前を持つ“和紗”と“上総”彼らは幼馴染である。
1、夕焼けの帰り道
 
僕の所属する吹奏楽部には同じ名前の男が二人いる。
それが僕、井上和紗と今、目の前で課題の紙と睨み合っている鈴木上総である。
上総とは幼稚園以来の幼なじみで、今までずっと別のクラスになった事がない。
まさに腐れ縁というやつである。
そして部活までも一緒。
もうここまでくると兄弟のような気すらしてくるものだ。

ふと視線を戻せば未だ睨めっこ状態である。
小さく溜息をつき軽く頭を小突いてやるとやっとこちらを見てニヤリと笑う。


「何だよ…気持ち悪いな」

思わず口から出てしまうが上総は気にする事もなく笑いを止めない。
「あのさ、もう外こんなんだし早く帰らない?」
僕が外を親指で指せば既に夕暮れ時。
「あぁー…もうこんな時間だったの?」
短めの黒髪をがしがしと掻き、無造作にプリントを鞄へと押し込むと僕に帰るか、と促し立
ち上がる。
全く長い間待ってやったんだから礼の一つくらい言っても良いもんだろうと思いながらも
雑な性格なのは百も承知なので出かけた言葉を飲み込んで後に続いた。
「そういえばやたら考え込んでたみたいだけどアレ決まったの?」

だらだらと家路に向かう僕達は一定間隔を置いて歩いていた。
僕の後ろにいる上総を振り返り問い掛けるとまたニヤリと笑う。
「だから気持ち悪い」
いつもならこんなに笑う事がない上総の笑顔を(僕の前ではよく笑うんだけどね)こうも
さっきから見ていてはだんだん気味も悪くなるというものだ。

ちなみにアレというのは吹奏楽部の夏休み恒例の課題の事で、各自夏休みという長い期間
を使って各々の担当する楽器の演奏力向上の為に何か一曲をマスターして新学期に部員の
前で発表するという物だ。
選曲は自由、オリジナルの曲でも構わない。
一人でやるもよし、多人数でやるもよし、というアバウトなもので去年は僕と上総、それ
と数人の友達とで曲を発表した。
出来が良い程に多少なりとも成績に響くので皆必死である。
今年も去年のメンバーでやろうという話しが持ち上がっていたのだが上総が今年は一人で
やりたいと言い出したのだ。
上総はピアノ担当なのでいなくなると豪華さが半減してしまうのだが、それは各自の自由
だから止める権利もなく今年は上総抜きでの演奏に決まった。
余程弾きたい曲でもあるのかと思えば今日までずっと選曲に悩んでいたのだ。
上総曰く誰の曲かは決まっているのだがどれを弾こうかという事で悩んでいたらしい。

「その顔はもう弾く曲は決まったって事?曲の提出期限明日までだぞ」
僕は直感(でなくとも何となく解るが)で曲がやっと決まったのだな、と思った。
一応選曲した物を顧問に提出しなければいけないのだが期限は明日まで。
大半の部員は既に練習に取り掛かっている。
もちろん僕もその一人。
「大丈夫だよ、ついさっき決まった」
先程までうんうん唸って悩んでいたとは思えないくらいあっけらかんと言い放つ。
上総らしいなぁなんて考えながらもやはり気になるので僕はしつこく内緒だ、と言う上総
に向かい選んだ曲を尋ねた。

「ここで言ったら楽しみ度半減だぜ?」
「でも気になる…」
ぶーっと拗ねる僕の色素の薄い髪をぐしゃりと撫でながら、
「今回の課題はさ、テーマがついてたろ?」
いきなり話しを切り替えられたが突然真剣な面持ちで見つめられたからちょっと驚いて首
を縦に振った。

「確か…誰かに向けて捧げたい曲…だっけ?」
つまりは親だったり友達だったりにこの曲を是非聴かせてあげたいとゆう”捧げる曲”を
コンセプトに今回の課題は出されたのである。
僕らはあまり深く考えず親に捧げるという事で意見が一致した。
だが上総は違ったらしく、それで単独という形になったのだ。

「そう、誰かに捧げる曲」


 

上総は一人で納得したように頷いて見せてまた僕の顔を覗き込んだ。

何だか真剣に見つめられるもんだからだんだんと焦ってきて体制を変えた。

 

「で、でさ!上総は誰に捧げるの?親じゃなかったら………友達、とか?」

 

できるだけ上総と視線を合わせないようにしどろもどろになりながらも聞いてみた。

きっと大切な人になんだろうなって思っていたからそう簡単に言うわけないか…と思ってたんだけど

 

「友達と言えば友達、でも俺にとっては友達以上」

「…え?何かよく解んないな~……つまりは、好きって事?」

 

回転の遅い頭を必死で動かして上総の言っている事を把握しようとした。

上総にとっては友達以上という事は“好き”という愛情があるわけだな、と。

何故だか僕はほんのちょっとだけその言葉に胸がチクリと痛むのを感じた。

でもそれが何でかは解らない。

ただ、僕の表情がさっきよりは少し陰ったという事だけは自分でも解った。
 

「そう、好き。そいつに聴いてほしいから弾くの」















目を伏せて穏やかな表情で微笑みながら話すその姿がとても羨ましいと思った。

上総が羨ましいのか…それともその想われている奴が羨ましいのか…

まさかそんな…と頭を振って自分の心に言い聞かせる。

(上総は友達、その友達に好きな人ができて動揺するなんて有り得ない、きっと驚いてるだけなんだ)と。

 

「でもさー初耳だよ?上総に好きな人いるなんて。どのクラスの子なの?」

ちょっと揄うように平静を装ってわき腹を小突いてみたりした。

 

「同じクラスの奴。馬鹿でドジでトロイ奴なんだけどいつも俺の事見てくれてる」

夕日の逆光に隠されてしまって一体どんな顔でその言葉を言っているかは解らなかった。

だけどその口調はとても嬉しそうでとても愛しそうにも感じられた。

 

「曲………聞きたくないのか?俺が何選んだか気になるんだろ?」

突然さっきの質問に戻されたけど僕の頭は今さっきの言葉のリプレイばかりしている。

僕も上総と同じクラスなのだ。

いつも僕達は一緒にいるのにいつそんな子ができたのか?

特に女子ともよく会話をする事もない上総なのに。

僕の知らない何処かできっとその子に惚れてしまったんだろうな、と

まるで僕が何もかも知ってなきゃいけないみたいな考えがよぎる。

悔しい…素直にそう思った。

上総が好きなわけじゃない。もちろん親友としてはとても大好きだ。

なのにこの悔しさは何だろう…?

いつの間にか僕は歩を止めていたらしく長い長い影だけが目の前に伸びていた。

上総は隣で何も言わずに僕を見ている。

 

「ブラームス…」

いきなり手を取って耳元で囁かれハっとなって我に返った。

「え……?」

我ながら格好悪い所を見せてしまったと恥じながら今聞いた名前を呟く。

 

“ブラームス”

 

「そう、そいつがブラームスの曲が凄い好きでさ……」

「!!……そうなんだ」

 

ブラームスは僕も大好きな作曲家、家に居て気持ちを落ち着けたい時はよく聴いている曲である。

でも以前上総にブラームスを弾いて?と言った時は俺はあいつはあまり好きじゃない、と断られたのだ。

だけどその嫌いな曲をその人の為になら弾く、という事に僕は益々悔しさが滲み出た。

決して顔には出さないように。

 

「今回の課題がこのテーマじゃなくても今回は単独でブラームスの曲弾きたかったんだよ」

「その人の為に…??」

「そ、お前の為に」

 

 

「は!!??」

一気に今までの考えが今の一言で消し飛んでしまった。

これでもかというくらいに口を開けて驚く僕を楽しそうにニヤニヤ見つめる。

何が何だか解らなくなってパニック状態になっている所で上総の家に着いてしまった

 

「だから楽しみが半減するっつったろ??悪いけど俺って欲しいもん手に入れるまで粘るからさ、まぁ頑張れよ?」

 

と言うとケタケタと笑って手を振ってさっさと自宅に入ってしまった。

残された僕は呆然自失。

嘘か本当か解らない。

今まで上総が嘘をついた事なんてなかった。

曇った気持ちがいきなり何にもない空間にポイっと放り出されたような気分になってしまって考えもまとまらない。

 

ただ一つ言えるのは、

   

“明日からどうしよう”

 

という思いだけだった。

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ナミ
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女性
自己紹介:
只の残念なOTKですヤッホイ^q^
趣味は読書にゲームに写真撮影とか色々。
実は本家のブログが全然違う名でやってたりするんですがこちらは一応駄文置き場専用という事でひっそり気侭にかなり雑食ジャンル(創作から版権まで)を取り扱っております。
万一リンクしてやろうという方がいらっしゃいましたら報告自由ですので適当に切り貼りしてやって下さい。
基本的にお題大好きなのでお題お借りして書いてます。
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