創作BL/学園もの/ほのぼの
*秘密の昼食*
いつもの昼下がり、今日も日課となったあの場所で昼食を取る。
それはよくアイツが見える俺だけの場所。
中庭の大きな木のすぐ近くにあるベンチでいつも一人で弁当を食べるアイツ。
それしか俺は知らない、 名前も学年も何も知らないのだ。
たまたま俺、村瀬 隆也はこの中庭がよく見渡せる渡り廊下の場所で弁当を食べていた。
それが大体一週間くらい前の話しだ。
ぼーっと何をするわけでもなく中庭を見ていたら俺と同じように一人で弁当を食ってる奴 がいたんだ。
あ、別に俺は友達いないわけじゃないからな。
アイツはどうか知らないけど…。
何というか儚げな印象を受けた。
たぶんハーフとかクォーターとかだと思うんだけど…。
整った目鼻立ちに栗色の髪、瞳はうっすら青くて動く人形みたいだった。
俺は何故だか目が離せなくなり弁当も中途半端に済ませてアイツを見てた。
昼休みが終わっても頭からなかなかアイツのあの悲しそうな顔が離れなくて授業にも身が 入らないまんま一日が終わってしまったのだ。
次の日にまた同じ場所に行ってみたら昨日と同じようにアイツはそこに居た。
それ以来、特に声を掛けるでもなくただアイツを見る為だけに此処に足を運ぶようになっ た。
もしかしたらこれが恋なのかもしれないと気付いたのはつい昨日。
中庭に迷い込んできた野良猫に向けた笑顔があまりにも綺麗で目を奪われた。
俺の頭は更にアイツでいっぱいになってしまった…。
近いうちに名も知らないアイツと一言でも話す事ができますようにと、柄にもなくお祈りなんてしてみた。
こうゆう肝心な所で出ない根性とか図々しさをとにかく憎らしく思う。
恋とは全く厄介なものだ…
次の日、いつものようにあそこへ行こうとすると友人の和紗に呼び止められた。
「村瀬!」
と言って元気よく手を振るあいつの隣にいつもいるはずのあのふてぶてしい幼馴染の顔がない事に気付いた。
不思議に思って尋ねてみると何でも風邪だとかで…
別に恨みがあるでもないのにちょっとだけざまぁみろ、とか思ってみた。
「あのさ、今日上総いなくて俺一人じゃつまんないから良かったら一緒にご飯食べない?」
ぼぅっと考えているといきなり昼食の誘いを受けた。
俺からの返事を待っているのか少しだけ心配そうな顔でこちらを見ている。
男のくせにこの上目遣いは可愛いな…あの馬鹿(幼馴染の上総)が惚れるのも何となく解った気がした。
あいつの代わりって感じがちょっと気にならないでもないが、何故か和紗ならあの場所に連れて行っても良いと思ったので俺は二つ返事で誘いをOKした。
何となしの会話を少ししているうちにあのいつもの渡り廊下に着いて俺たちは腰を下ろした。
「へー、いつも此処で食べてるんだ?以外と涼しいんだね」
和紗はさっさと弁当を広げようと包みに手を掛けていたが俺がいきなり黙ったのが気になったのかその手を止めた。
俺はと言えば相変わらずあのベンチに座って弁当を食べているアイツに目が釘付け状態だ。
「……せ、むらせ!!!」
「!!……あ、わりぃわりぃ」
和紗の声に驚き思わず持っていた弁当を落としかけたが何とか踏みとどまった。
「何、もしかして村瀬って綾の事好きなの?」
唐突に和紗から出たアイツの名前らしき単語に俺は異常に反応してしまい
「え?あいつ綾って言うのか???」
なんて恥ずかしい事を言ってしまった。
「名前……知らないのに見てたの?しかも毎日?」
ニヤリと笑う和紗が何故か悪魔のようにも見えた。
それよりも何で俺が毎日見ているのを知っているのかが問題だ。
「ま、まさかお前も俺の事見て…」
「なわけないでしょ!たまたま5日くらい前に窓から下の渡り廊下見てたら村瀬が見えたの」
その時もご飯も食べずにどっか見てたから…と笑いながら和紗は言った。
一瞬焦ったがホッとして胸を撫で下ろすと、和紗が肩を叩いて
「がんばってね」
と嬉しいやら何やら複雑な言葉をくれた。
それから昼食を取りながら和紗に綾の簡単な情報だけを聞いてその日は終わった。
どうせなら和紗があそこでアイツ…綾を呼んでくれたら良かったのに…
なんて思いもしたが和紗が言うには自分から声掛けなきゃだめ!!
とのお叱りを受けた。
できる限りは協力してあげるよ、と言われて嬉しいのだがつまりはあの幼馴染にも和紗から話がいくと思うと溜め息が出た。
まだまだ俺の道のりは長いようである。
趣味は読書にゲームに写真撮影とか色々。
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